ユーロの起死回生


 久々に痺れる展開でしたね。東京タイムから主要中銀(日・米・欧)やG7から緊急声明が流れて何事かと思っているうちに、ECBが「機能不全に陥っている債券市場に介入する」との声明を唐突に発表しました。この声明が流れた瞬間は僕自身も???と思いましたし、株式・債券・為替の各市場も反応するのにちょっとラグがあったように思います。しかし、ECBが国債買入を開始すると判明すると、先週までのリスク回避の流れが一気に巻き戻されました。ECBもやればできるじゃん。というか、先週末の欧州市場がそれ程危機的な状況だったのですね。あまり意識していなかったのですが、先週末の欧州短期金融市場ではドル資金が詰まりそうになっていたそうで・・・ その辺りが中銀間のスワップ協定の再締結に繋がるのですね。


 僕自身も欧州関連の数少ないエクスポージャーを外そうかどうか、週末に結構シリアスに悩んだあげく、最終的に外す方向で朝から準備をしていたのですが、その合間に掛かってきた電話に応対しているうちに上記の状況となり、結局は先送りしちゃいました・・・I嬢お電話ありがとうございました。グッジョブです。


 ともあれ、ECBの大胆な行動力には驚かされました。日銀あたりだったら、ご丁寧に買切オペの手順を開示するなど、ステップを踏んでオペレーションを行なうのが常ですが、ECBにおかれましては、そういったものを全てすっ飛ばして即日買入を開始するという豪快な対応に心から痺れました。保有国債の内訳が公表されるのを楽しみにしております。時価総額ウェイトとかで買い入れを行なったのではないかと、弊社の欧州担当者は朝会で説明していましたが、こんな状況でそんな眠たいことするかよって僕は思ってます。


 まあ、常々思うのですが、やっぱりお上には逆らっちゃいけませんな。十分な行使力のある主権国家(米国・日本・英国・欧州コア・中国)は、いざとなれば市場を捻じ伏せる能力を有しています。国家システムを守るためであれば、市場のルールだっていとも簡単に変えますし、中銀は無尽蔵に金を刷って市場を支えることも出来ます。このことは米国・英国・日本(他国に比べれば上品な感じですが・・・)で行なわれてきましたし、ちょっとエンジンが掛かるのに時間が掛かりましたが、欧州もその一線を漸く超えました。国家に喧嘩を売る時は適切な引き際を考えておかないと、本当に大怪我しますね。


 この一件で、南欧諸国の問題については一応のケリが付いて、次のステージに進むと考えて良いのかなぁ。週末のドイツ地方選では、案の定メルケル率いるCDUが敗北して、ギリシャ等の救済に反対する野党SPDが票を伸ばしており、政治的な火種は燻っていると見た方が良さそうかな・・・